天からお金が降ってくる!?

税理士業って基本的には顧問先にお金を払っていただくばかりで、税金を減らすことはあっても、お金を公機関からもらってくることって無いんですよね。

社労士業なら助成金があって、試算表を見ていたら、雑収入に大きな入金があって、そのことを話題にするとお客様もニッコニコだったりとちょっと羨ましかったりします。

じゃあ、税理士もお手伝いできて、お金がもらえるものはというと補助金なんですが、おそらくまぁまぁの規模以上の税理士事務所さんを除いて、苦手な人が多いんだろうなぁと思います。私の周囲の税理士さんに話を聞いても「補助金は行政書士さんにお願いしてる」なんてことが多いようです。

じゃあなぜ苦手なのか?

「本業の税務会計で十分忙しいからやる必要が無いよ」なんていう税理士さんもいると思うんですが、やはり補助金の種類が多すぎて全体像がつかめていないところにも理由があるんじゃないでしょうか。

そこで今回は、誤解を恐れずに細部を省略して、5分で全体像をザクッとつかんでいただくことを主眼に置いて、補助金をまとめ直してみました。顧問先に「こんな補助金がありますよ」とポジティブに情報を伝えられるようになっていただけるといいなぁと思います。

まずは補助金の大義名分を掴まえよう

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補助額と補助率は最も低い分類を載せています

主立った補助金7種類に絞ってリストアップしてみました。
知名度抜群なものからそうでないものまでありますが、ここで必要なのは名称を覚えることではありません。

補助金は税金を使って行われますので、「補助をする大義名分」に沿うことが必須です。「そんな理由のために税金を使うわけにはいかないよ」と思わせた瞬間に負けですので、ここを抑えておく必要があります。

大義名分は大きく分けると次の3つ

  1. 今までと違った切り口で売上アップ・業務効率アップさせる(表では数字のインデックス)
  2. コロナ禍に対応して業務を変える(表では黄色のインデックス)
  3. 後継者不足で事業が消滅するのを防ぐ(表では水色のインデックス)

持続化補助金の補助対象に「Webサイトの作成」が含まれているんですが、これだけを見て「今までなかったから自社サイトを作りたい」と申請しても、採択される可能性はかなり低いです。

「じゃあ、どんなWebサイトならいいんだよ?」と突っ込まれそうですが、例えば、理容師さんが、自宅から外に出られない高齢者のために、訪問して散髪を行うサービスを始めるので、その周知のためにサイトを作りますみたいな感じだと、「今までとは違った切り口で売上アップ」が見込める訳です。

とはいえ、大義名分があれば採択されるかというとそんな簡単なものではなく、補助金は助成金と違って、要件を満たせば誰でももらえるものではありません。他の人たちが申請したものとの競争になるんだよということを意識しておきましょう。

小規模事業者って人数制限キツくない?

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小規模事業者の定義

ご安心ください。「常時使用する従業員」は、正社員か正社員の3/4以上働くパートタイムだけを数えることになってます。法人なら、社会保険の加入者から、役員を除いた人数と考えてください。

ウチの事務所も人数だけなら10名いるんですが、事業主の私や社会保険に加入義務の無いパートさん達を除くと、対象になるのはたった3名。持続化補助金受けられます。セーフ!!

これ買っちゃった。補助金申請できる?

「これ買っちゃったんだけど、補助金もらえないかなぁ」って良く聞かれる質問の1つです。その気持ちは大変よく分かりますが、残念ながらこれは無理です(コロナ関連の例外を除きます)

補助金を申請する → 採択してもらう → 通知交付が届く

この流れの後に発注をしないといけません。国からすると「自分のお金で買えたんでしょ?なんでわざわざ補助する必要があるの?」ってことです。

お金無いけど補助金で支払すればいいよね?

これも無理です。補助金は事業の実施期間が終了して、実績報告書の受付が終わるまで支給されません。ものづくり補助金のように金額が大きい機械を買ったりする場合は、銀行から融資を受けて補助金が出るまでつなぐケースが多いようです。

補助金って非課税だよね?

消費税は対象外のため支払う必要はありませんが、法人税・所得税は課税対象となります。

とはいえ、補助金に対して税金を支払うようでは、何のための補助かよく分からなくなってしまうので、それを防ぐために圧縮記帳という制度があります。これは将来の減価償却費を先取りして、補助金と相殺するというものです。

2,000万円の機械を買って使えば、その2,000万円は何年かにわたって少しずつ減価償却費として経費になっていきます。圧縮記帳をすると1,000万円の補助金を相殺して税金がかからないようにするかわりに、減価償却費は残りの1,000万円が対象になります。補助金をもらったときに一気に税金をかけずに、少しずつかけて負担を軽減させるという立て付けになっています。

ああ、恐るべし収益納付

あまり知られていないのですが、補助金を返還する収益納付という制度が実はあります。補助金は原資が税金のため、これを使って利益を出すのは望ましくない、という分かるようなよく分からない理由で設けられているそうです。

直接に収益が生じないもの(チラシの配布・店舗改装など)は対象にはなりませんが、直接に収益が生じるもの(機械を買って製造したものを販売する・ネットショップを作って商品を販売するなど)は対象になります。その事業から生じた利益(収益-経費)を別の事業からの利益と区分して、補助事業の自己負担分を差し引いた額を返還することとなっています。

赤字の事業年度の場合は返還しないでいいことになっていますが、個人事業の場合は法人でいう役員報酬に相当する分が経費になりません。そのため赤字になることが原則はありえないため、ストレートに収益納付が問題になってきます。

手間暇かけて補助金申請して、結局、全額返還したなんていう笑えない事態にならないように、申請をする時点で収益納付のことを考慮しておく必要があります。

補助金ってなんか使い勝手が悪すぎない?

ここまで読まれてそう感じられた方も多いことでしょう。そうです、補助金は税金が原資なので、使い勝手が悪くて当たり前なのです。

国としても、補助金の趣旨に合った使い方のために支給をし、かつ、不正を防がなければいけないという観点からはそうならざるを得ないのです。決して、自由に使えるお金をくれる訳では無いのです。

「新しいことを始めようと思ったときには、まず補助金が受けられるかチェックすること」と頭の片隅に置いておいて、上手く趣旨が合致するようなら、「行きがけの駄賃に補助金をもらっとこ」ぐらいに考えてもらえると、ちょうどいいのかなと思います。

補助金ありきで新しいことを始めると失敗する確率も高くなります。あくまでも「補助金は従」と考えておいてくださいね。

おまけ

一般社団法人は補助金の対象外になることがほとんどです。その昔、カッコがいいからという理由で設立を考えているお客様がいらっしゃいましたが、こんな落とし穴には要注意です。